素形材産業分野の「特定技能」ビザについて徹底解説!

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2019年4月から新しい在留資格「特定技能」が新設されることによって、素形材産業分野において、通常の就労ビザでは認められていなかった、外国人の単純労働が可能になります。

「特定技能」ビザは、特定産業分野に限り取得することができる在留資格です。

「特定産業分野」は複数ありますが、今回は「素形材産業分野」における「特定技能」ビザについて考えていきます。

今回の記事が皆様の参考になれば幸いです。

「特定技能」ビザ全般については、以下の記事で詳しく解説をしています。↓
外国人の「特定技能」の在留資格について徹底解説します!

素形材産業とは?

素形材産業とは?

そもそも「素形材」という言葉自体があまり馴染みがない言葉なので、簡単に解説をしていきます。

「素形材産業」の定義は、素材を加熱や加圧など何らかの方法で変形・加工する技術を用いて、目的とする形状や性能を有する製品を作り出す産業及びこれらの工法に必要な機械・装置を生産する産業並びに製品に熱処理などを施して特定の性能を付与する産業」と定義されています。

参照:<経済産業省 製造産業局 素形材産業室 我が国ものづくりを支える素形材産業より>

例えば、

自動車で考えてみると、鋳物(エンジン)、鍛造品(トランスミッション)、金属プレス品(ボディ)など多くの素形材が使用されていることがわかります。

また、携帯電話・パソコン等のあらゆる製品にも素形材が使われています。

素形材産業分野で「特定技能」の外国人を受け入れる目的

素形材産業分野で「特定技能」の外国人を受け入れる目的

素形材産業分野で「特定技能」の在留資格によって外国人を受け入れる目的・趣旨は、

「素形材産業分野において深刻化する人手不足に対応するため、専門性・技能を生かした 業務に即戦力として従事する外国人を受け入れることで、素形材産業分野の存続・発展を図り、もって我が国の経済・社会基盤の持続可能性を維持する。」

ことが目的とされています。

素形材産業分野は人手不足

素形材産業分野は人手不足

素形材産業の業務に従事することができる「特定技能」ビザで外国人を受け入れる一つの理由として、素形材産業分野の人手不足をあげることができます。

現在、素形材部品に対する需要が高まる中、平成 29 年度の人手不足数は、素形材産業に 関連する有効求人数と有効求職者数の差から3万人であり、5年後には、年2%程 度と予測される素形材需要の拡大とこれに伴う労働需要の拡大が続くと、6万 2,000 人の人手不足が生じるものと推計してされています。

また、素形材産業分野に関連する「職業分類」における有効求人倍率(平成 29 年度)は 2.83 倍となっており、素形材産業分野に係る「職種」における有効求人倍率(平成 29 年度)は、

例えば、鋳物製造工 3.82 倍、鍛造工 4.32 倍、金属プレス工 2.97 倍となっているなど、 深刻な人手不足の状況になっています。

今日において、素形材産業分野は、様々な金属部品を製造・供給する日本の製造業の根幹を担 っており、日本の国民生活に不可欠な分野になっています。

そこで、人手不足を解消するために「特定技能」ビザで即戦力の外国人を受けれようと考えられています。

素形材産業分野では様々な取り組みも行われている

素形材産業分野では、人手不足の解消のために様々な取り組みが行われています。

①生産性向上のための取組

各企業や業界では、

・生産現場の改善の徹底

・研修・セミナー等における人材育成

などの継続的な取組を実施しています。

また、経済産業省も企業による設備投資やIT導入を支援する施策によ り、企業による生産性向上の取組を支援しています。

参照:経済産業省ホームページ 素形材産業人材戦略の策定報告書から

②国内人材確保のための取組

例えば、

各企業や業界では、

・適正取引の推進等による適正な賃金水準の確保

・女性 や高齢者も働きやすい現場環境の改善

等に取り組んでいます。

また、経済産業省も

・中小企業が女性、高齢者等多様な人材を活用する 好事例をまとめた「人手不足ガイドライン」の普及

・賃上げに積極的な企業への 税制支援

・下請等中小企業の取引改善に向けた取組

等を行うことで、企業による国内人材確保の取組を促進しています。

上記のような取り組みを行い、それでも人手不足が深刻なために、「特定技能」ビザで外国人を受け入れることで、人手不足の解消をしていこうと考えられています。

以下、中小企業庁から発表されている「人手不足ガイドライン」の一部を抜粋しています。

中小企業庁 人手不足ガイドライン

 

中小企業庁 人手不足ガイドライン

参照:中小企業庁 人手不足ガイドライン

外国人の受け入れ見込み数は?

外国人の受け入れ見込み数は?

素形材産業分野における向こう5年間の受入れ見込数は、最大2万 1,500 人であり、これを向こう5年間の受入れの上限として運用されます。

この受け入れ数の根拠は、

「向こう5年間で6万 2,000 人程度の人手不足が見込まれる中、今回の受入れは、 毎年1%程度の労働効率化(5年間で3万人程度)による生産性向上及び追加的な国内人材の確保(5年間で1万人~1万 5,000 人程度)を行ってもなお不足すると見込まれる数を上限として受け入れるものであり、過大な受入れ数とはなっていない。」

というところからきています。

特定技能1号(素形材産業分野)のポイント

特定技能1号(素形材産業分野)のポイント

素形材産業分野において「特定技能1号」ビザを考えるにあたり知っておきたいポイントを以下に解説をしていきます。

また、現在素形材産業分野の「特定技能」ビザについては、「特定技能2号」は認められていません。

そのため、今後、素形材産業分野が「特定技能2号」の対象になれば、在留期限に上限がなくなりますので、長期で雇用することも可能になると考えられます。

技能水準及び評価方法等

技能水準及び評価方法等

「特定技能1号」ビザを取得するためには、「製造分野特定技能1号評価試験(仮称)」に合格をする必要があります。

「特定技能評価試験」に全般については、以下の記事で詳しく解説をしています。↓
特定技能評価試験に求められる試験水準等を解説!

製造分野特定技能1号評価試験(仮称)

この試験は

「素形材産業分野」における業務について、監督者の指示を理解し的確に業務を遂行又は自らの判断により業務を遂行できる者であることを認定するものです。

この試験に合格することによって、一定の専門性・技能を用いて即戦力として稼働する ために必要な知識や経験を有するものと認められます。

また、「素形材産業分野」は、「特定技能」ビザの対象となる「産業機械製造業分野」、「電気・電子情報関連産業分野」と製造現場で従事する業務の多くが共通していることから、技能水準及び評価方法等を統一し、「製造分野特定技能1号評価試験(仮称)」として共通の評価試験が実施されることになります。

評価方法

試験言語:主に現地語を予定

実施主体:経済産業省が選定した民間事業者

実施方法:学科試験及び実技試験

実施回数:年1回程度、国外実施を予定(必要に応じて国内での実施も検討)

開始時期:平成 31 年度内予定

とされています。

国内試験を受験できない人

国内で試験を実施する場合、

1、退学・除籍処分となった留学生

2、失踪した技能 実習生

3、在留資格「特定活動(難民認定申請)」により在留する者

4、在留資格「技能実習」による実習中の者

上記外国人は、在留資格の性格上、当該試験の受験資格を認めないとされています。

日本語能力水準及び評価方法等

日本語能力水準及び評価方法等

「特定技能1号」ビザを取得する外国人には、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力を有するものことが求められますので、以下の試験の合格等が必要になります。

①日本語能力判定テスト(仮称)

この試験に合格することによって、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力を有するものと認められることから、基本的な日本語能力水準を有するものと評価されます。

評価方法について

実施主体:独立行政法人国際交流基金

実施方法:コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式

実施回数:年おおむね6回程度、国外実施を予定

開始時期:平成 31 年秋以降に活用予定

とされています。

②日本語能力試験(N4以上)

この試験に合格することによって、「基本的な日本語を理解することができる」 と認定されますので、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程 度の能力を有するものと認められ、本制度での受入れに必要となる基本的な日本語能力水準を有するものと評価されます。

評価方法

日本語能力試験は、

実施主体:独立行政法人国際交流基金及び日本国際教育支援協会

実施方法:マークシート方式

実施回数:国内外で実施。国外では 80 か国・地域・239 都市で年おおむね1回 から2回実施(平成 29 年度)

とされています。

日本語能力試験N4については以下の記事で解説をしています。↓
特定技能ビザに必要な「日本語能力試験N4」とは?

技能実習を修了した外国人も特定技能に移行できる

技能実習を修了した外国人も特定技能に移行できる

素形材産業分野に関連する第2号技能実習を修了した外国人は、各業務における「特定技能1号」に移行することができます。

従事する業務と技能実習2号移行対象職種との関連性は、以下の通りです。↓

素形材産業分野の従事する業務と技能実習2号移行対象職種との関連性

素形材産業分野の従事する業務と技能実習2号移行対象職種との関連性

参照:「素形材産業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」に係る運用要領から

また、以下に「素形材産業分野」「電気・電子情報関連産業分野」「産業機械製造業分野」の3つの製造業における、技能実習からの移行に関するイメージ図を掲載しておきます。↓

<参照:経済産業省 製造産業局 総務課 製造業における外国人材の受入れについてより>

「技能実習制度」については、以下の記事で詳しく解説をしています。↓
技能実習生って何?外国人の技能実習制度について徹底解説!

素形材産業分野の特定技能ビザの業務内容は?

素形材産業分野の特定技能ビザの業務内容は?

素形材産業分野において受け入れる「1号特定技能外国人」が従事することができる業務は、

上述した試験おいて合格した区分に応じて就業が可能になります。

業務内容について

以下に、各区分おける業務内容を記載していきます。

・鋳造(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、溶かした金属を型に流し込み製品を製造する作業に従事)

・鍛造(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、金属を打撃・加圧することで強度を高めたり、目的の形状にする作業に従事)

・ダイカスト(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、溶融金属を金型に圧入して高い精度の鋳物を短時間で大量に生産する作業に従事)

・機械加工(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、旋盤、フライス盤、ボール盤等の各種工作機械や 切削工具を用いて金属材料等を加工する作業に従事)

・金属プレス加工(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、金型を用いて金属材料にプレス機械で荷重を加えて、曲げ、成形、絞り等を行い成形する作業に従 事)

・工場板金(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、各種工業製品に使われる金属薄板の加工・組立てを行う作業に従事)

・めっき(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、腐食防止等のため金属等の材料表面に薄い金属を被覆する作業に従事)

・アルミニウム陽極酸化処理(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、アルミニウムの表面を酸化させ、酸化アルミニウムの皮膜を生成させる作業に従事)

・仕上げ(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、手工具や工作機械により部品を加工・調整し、精度 を高め、部品の仕上げ及び組立てを行う作業に従事)

・機械検査(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、各種測定機器等を用いて機械部品の検査を行う作 業に従事)

・機械保全(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、工場の設備機械の故障や劣化を予防し、機械の正常な運転を維持し保全する作業に従事)

・塗装(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、塗料を用いて被塗装物を塗膜で覆う作業に従事)

・溶接(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、熱又は圧力若しくはその両者を加え部材を接合する作業に従事)

の業務区分になります。

また、当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務(鋳造の例:加工品の切削・ばり取り・検査業務、型の保守管理等)に付随的に従事することは差し支えはないとされています。

素形材産業分野の対象

ここでいう素形材産業分野の対象は、「日本標準産業分類」に該当する事業者が行う業務となっています。

「日本標準産業分類」では、

2194 鋳型製造業(中子を含む)

225 鉄素形材製造業

235 非鉄金属素形材製造業

2424 作業工具製造業

2431 配管工事用附属品製造業(バルブ、コックを除く)

245 金属素形材製品製造業

2465 金属熱処理業

2534 工業窯炉製造業

2592 弁・同附属品製造業

2651 鋳造装置製造業

2691 金属用金型・同部分品・附属品製造業

2692 非金属用金型・同部分品・附属品製造業

2929 その他の産業用電気機械器具製造業(車両用、船舶用を含む)

3295 工業用模型製造業

が該当します。

参照:日本標準産業分類

外国人を雇用する会社(特定技能所属機関)に必要なこと

外国人を雇用する会社(特定技能所属機関)に必要なこと

素形材産業分野で「特定技能」ビザで外国人を雇用する「特定技能所属機関」にも求められることがあります。

1、「製造業外国人材受入れ協議会(仮称)」の構成員になること。

2、製造業外国人材受入れ協議会が行う一般的な指導、報告の徴収、資料の要求、 意見の報告又は現地調査等その他に対し、必要な協力を行うこと。

上記の事項について「特定技能所属機関」に条件が課されます。

「製造業特定技能外国人受入れ協議・報告会」については以下の記事で解説をしています。↓
製造業特定技能外国人受入れ協議・報告会について解説!

また、特定技能所属機関については、以下の記事も参考にしてください。↓
特定技能で受入れ先になる特定技能所属機関の基準について

外国人の雇用形態について

外国人の雇用形態について

「特定技能」ビザで外国人を雇用する場合は、直接雇用であることが必要です。

したがって、派遣での就業はできませんので、注意が必要です。

経済産業省が所管する「素形材産業分野」「産業機械製造業分野」「電気・電子情報関連産業分野」における、外国人従業員の相談窓口については、以下の記事で解説をしています。↓
【特定技能】製造業の外国人従業員向け相談窓口について解説

まとめ

素形材産業分野における「特定技能」ビについてのまとめ

今回は、素形材産業分野における「特定技能」ビザについて考えてきました。

パソコンや携帯電話、自動車など私たちの生活にも必要不可欠になっている「素形材」。

今回の「特定技能」ビザがどのような成果を出すのか、私たちも慎重にチェックをしていくことが大切です。

皆様の参考になれば幸いです。

「特定技能」ビザについて解説した記事一覧は、以下の記事にまとめています。↓
特定技能の在留資格について解説した記事一覧(まとめ)

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