介護分野で外国人を雇用する際の在留資格等4つの制度を解説

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介護分野の業種において、外国人を雇用することを検討するケースも増えてきています。

しかし、全ての外国人が介護分野で就労することができるかというと、そうではありません。

そこで、今回は介護分野で外国人を雇用する際に知っておきたい在留資格などについて考えていきたいと思います。

皆様の参考になれば幸いです。

外国人の在留資格全般については、以下の記事で解説をしています。↓
外国人の在留資格についてわかりやすく解説します!

介護分野で働くことができる外国人は?

介護分野で働くことができる外国人は?

上述したとおり、全ての外国人が介護分野で働くことはできません。

現在、介護職に関する外国人の受け入れ制度には、

・EPA(経済連携協定)

・在留資格「介護」

・技能実習生

・特定技能

の4種類があります。

以下に上記4種類の介護関する制度の特徴について書いていきます。

EPA(経済連携協定)に基づく外国人介護福祉士候補者の雇用

そもそも、EPAとは、日本と相手国の経済活動の連携強化を図るもので、3ヶ国(「インドネシア」「フィリピン」「ベトナム」) から外国人を受け入れています。

また、EPAは

「介護分野の労働力不足への対応ではなく、二国間の経済活動の連携の強化の観点から、経済連携協定(EPA)に基づき、公的な枠組で特例的に行うものである。」

とされていますので、「特定技能」の在留資格のように趣旨が労働力不足への対応ではないことも知っておかなければいけません。

インドネシア人のケース

「高等教育機関(3年以上)卒業+インドネシア 政府による介護士認定」又は「インドネシアの看護学校(3年以上)卒業」などの要件を満たしているインドネシア人の場合は、事前に日本語研修(6か月)を受け、介護事業所とのマッチングが行われ、「特定活動」の在留資格を付与されて日本に入国することになります。

ただし、日本語能力については、「 日本語能力試験 N5 程度」以上で入国することができ、入国後もさらに日本語や介護の基礎に関する研修を受けた上で、介護事業所で雇用されることになります。

フィリピン人のケース

「4年制大学卒業+フィリピン政府による介護士認定」又は「フィリピンの看護学校(学士)(4 年)卒業」などの要件を満たしているフィリピン人の場合は、上記インドネシア人のケースと同様、事前に日本語研修(6か月)を受け、介護事業所とのマッチングが行われ、「特定活動」の在留資格を付与されて日本に入国することになります。

日本語能力についても、「 日本語能力試験 N5 程度」以上で入国することができ、入国後もさらに日本語や介護の基礎に関する研修を受けた上で、介護事業所で雇用されることになります。

ベトナム人のケース

「3年制又は4年制の看護課程修了」などの要件を満たしているベトナム人の場合は、事前に訪日前日本語研修(12か月)を受け、介護事業所とのマッチングが行われ、「特定活動」の在留資格を付与されて日本に入国することになります。

インドネシア人とベトナム人のケースで訪日前日本語研修は6ヶ月でしたが、ベトナム人の場合は12ヶ月となっていますので、注意が必要です。

また、日本語能力については、ベトナム人のケースでは N3以上で 入国することができ、入国後もさらに日本語や介護の基礎に関する研修を受けた上で、介護事業所で雇用されることになります。

EPAで介護事業所とマッチングした外国人の働ける期間は?

EPAで雇用した外国人は、介護福祉士候補者として「特定活動」の在留資格を付与され、介護施設で就労・研修を行うことになります。

この際に与えられる「特定活動」の在留資格の在留期間の上限は4年とされていますので、介護事業所で働くことができる期間は4年となります。

ただし、日本に入国してから 4 年目に介護福祉士の国家試験を受験し、合格することができれば、在留期間を更新しながら永続的に働くことが可能になります。

しかし、残念ながら不合格となった場合は、帰国しなければなりません。

4年目に介護福祉士の国家試験を受験して不合格になった場合でも、もう1年「特定活動」の在留資格を延長し、引き続き介護施設で 就労・研修することが認められることもありますので、必ずしも一度の不合格で帰国しなければならないということではありません。

また、不合格となり帰国した場合でも、「短期滞在」の在留資格で再度日本に入国して国家試験を受験することも可能です。

JICWELSによるマッチング支援を受けることができる

上述したとおり、EPA(経済連携協定)に基づく受入れは、二国間の協定に基づき公的な枠組みで特例的に行うもののとされています。

つまり、公正かつ中立にあっせんを行うとともに適正な受入れを実施する観点から、日本では国際厚生事業団(JICWELS)が唯一の受入れ調整機関として位置づけられ、これ以外の職業紹介事業者や労働者派遣事業者に外国人候補者のあっせんを依頼することはできないようになっています。

そのため、介護事業者と外国人の双方の意思を尊重した採用が行われています。

ただし、受入れ人数には上限があり、すべての事業所がマッチングするというわけではないので、 注意する必要があります。

EPA(経済連携協定)に基づく外国人介護福祉士候補者の雇用の大まかな流れは以下のとおりです。↓

EPA(経済連携協定)に基づく外国人介護福祉士候補者の雇用流れ

<参照:厚生労働省ホームページより>

在留資格介護

在留資格介護

日本の公私の機関との契約に基づいて介護福祉士の資格を有する者が「介護又は介護の指導」を行う業務に従事する 活動を行う場合は、「介護」の在留資格を取得して、介護事業所で就労することが可能になります。

つまり、日本の「介護福祉士養成校」に通う外国人留学生は、 卒業して介護福祉士を取得すると、「介護」という在留資格を取得ができるようになります。

介護の在留資格取得までの流れ

一般的な、「介護」の在留資格取得までの流れは、以下のとおりです。↓

1、外国人留学生として入国

2、介護福祉士養成施設で修学(2年以上)

3、介護福祉士の国家資格取得

介護の在留資格取得までの流れ

<参照:法務省のホームページより>

介護福祉士養成校入学のためには日本語能力も必要

外国人留学生が「介護」の在留資格を取得するために、介護福祉養成学校に入学するためには、一定の日本語能力も必要になると考えられています。

これは、公益社団法人日本介護福祉養成施設協会が発表している、「外国人留学生受入に関するガイドライン」で発表されています。

「外国人留学生受入に関するガイドライン」では、介護福祉養成学校に選抜するための基準として以下のように記載されています。

・日本語能力試験でN2以上に合格した者

・法務大臣により告示されている日本語教育機関で 6か月以上教育を受け、入学選抜のための日本語試験 でN2相当以上と確認された者

日本学生支援機構が実施する日本留学試験の日本語科目で200点以上取得した者

日本語漢字能力検定協会が実施するBJTビジネス日本語能力テストで400点以上取得した者

つまり、概ねN2程度の日本語能力が必要であると考えることができます。

ただし、選抜基準は学校によって異なりますので、事前に確認しておくことが必要です。

在留資格介護の外国人を雇用するためには?

在留資格「介護」の外国人の雇用にあたっては、調整を担う機関がないため、事業者が自ら介護福祉士養成校と連携するなど、自主的な採用活動を行う必要があります。

また、もし介護福祉施設に留学している外国人がいる場合は、、実習先やアルバイト先として協力するなどの提携をすることもできるかもしれませんので、積極的に外国人を採用していることなどを伝えておくと良いと考えることができます。

外国人をアルバイトで雇用する場合は、資格外活動許可が必要になりますので、以下の記事も参考にしてください。↓
資格外活動って何?留学生をアルバイトで雇用する時の注意点

在留資格介護で雇用した外国人が働ける期間は?

「介護」の在留資格を取得しているということは、介護福祉士資格を持っていますので、専門人材として 期待でき、採用してすぐに配置基準に含めることができます。

また、在留資格「介護」の在留期間は、「5年、3年、1年又は3月」ですが、本人が望む限り、繰り返し更新できますので、永続的に働くことが できます。

介護の技能実習制度を活用した外国人(技能実習生)の雇用

介護の技能実習制度を活用した外国人(技能実習生)の雇用

技能実習制度とは、国際貢献のため、開発途上国等の外国人を日本で一定期間(最長5年間)に限り受け入れ、OJTを通じて技能を移転する制度です。

技能実習制度については、以下の記事で詳しく解説をしています。↓
技能実習生って何?外国人の技能実習制度について徹底解説!

外国人の日本語能力はどの程度必要?

日本への入国時は、日本語能力試験 N4 程度が要件ですが、1年後はN3程度が要件となります。

また、1年後に N3 程度に満たない場合は、当面、雇用されている事業所で介護の技能の習熟のために必要な日本語を学ぶことなどを条件に、引き続き3年目まで在留すること ができるようになります。

技能実習生が介護事業所で働ける期間は?

入国1年後の試験に合格すると追加で2年日本に在留することができます。

また、さらに3年後の試験に合格するとさらに2年、実習を受けることができます。

そのため、最長5年間日本に在留して技能実習生として介護事業所で就労することができるようになり、実習修了後は帰国し、母国で介護業務に従事することになります。

ただし、技能実習期間中に介護福祉士の国家資格を取得すれば、 在留資格「介護」に変更して、日本で永続的に働くこともできるようになります。

また、3年目まで修了した技能実習生は、後述する「特定技能1号」の在留資格に必要な試験が免除されます。

介護の技能実習の対象施設は?

介護の技能実習の対象施設については、以下の一覧を参考にしてください。↓

介護の技能実習の対象施設

<参照:厚生労働省 技能実習「介護」における固有要件についてより>

介護の技能実習生を雇用するためには?

「介護」の技能実習生を雇用するためには、事業協同組合や商工会等の団体が監理団体として、技能実習生を受け入れて講習を行い、 実習先となる介護事業所との調整を担いますので、監理団体を探して問い合わせをするなどの対応をする必要があります。

また、OTIT(外国人技能実習機構)の HPには、監理団体を検索できるページもありますので、以下に記載しておきます。↓
OTIT(外国人技能実習機構)のホームページ

在留資格特定技能1号

在留資格特定技能1号

対象となる外国人は、「技能水準・日本語能力水準」を試験等で確認された上で日本に入国します。

「特定技能」の在留資格を取得することで、介護事業所で最大5年間雇用することができます。

5年後は帰国になりますが、介護福祉士の国家資格を取得すれば、在留資格「介護」に変更して、永続的に働くこと ができるようになります。

また、上述したとおり3年目まで 修了した技能実習生は、 「特定技能1号」に必要な試験が免除されます。

介護の「特定技能」の在留資格については、以下の記事で詳しく解説をしています。↓
介護分野の「特定技能」ビザについて徹底解説!

就労制限のない外国人を雇用する方法もある

就労制限のない外国人を雇用する方法もある

上述したとおり、日本に滞在している外国人は在留資格を取得してその目的にあった活動をすることになります。

しかし、「永住者」や「日本人の 配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」などの在留資格を持っている外国人は、就労制限がないため、日本人と同様に働くことができます。

そのため、就労制限がない在留資格を持っている外国人を雇用するという選択も検討することができます。

まとめ

介護分野で外国人を雇用するための制度のまとめ

今回は、介護分野で外国人を雇用するための制度について考えてきました。

今後も外国人材はとても重要な役割を持ってくると考えられますので、しっかりと制度や法律などを確認しながら運用していくことが求められます。

この記事が皆様の参考になれば幸いです。

外国人を雇用した場合は、雇用状況の届出などの手続きも必要ですので以下の記事も参考にしてください。↓

外国人の雇用状況の届出って何?わかりやすく解説します!

また、外国人介護人材が安心して就労できるようにするために創設された、「外国人介護人材受入環境整備事業」については、以下の記事でも解説をしています。↓
外国人介護人材受入環境整備事業の創設について

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